# 戯曲分析vol.1 --- ## この資料の読み方 * 原則下に下に進んで、一番下まで行ったら右に進んでいってください * 興味ないところは飛ばして右に行っちゃってもいいです * 右下にどっちに進めるかが表示されてます --- ## 大原則 * 役者がすべき戯曲読解は「正しい戯曲の読み方」を探求すること <span style="font-size: 3em; color: red;">ではない</span> >>> ## 大原則 * できるだけ面白い読みを「発見・創作する」ことが目的です * 今から取り組む戯曲は「世紀の大傑作」であり、傑作には意味のない文章・文字は存在しません<sup>*1</sup> * 「あなたが読むから」出来る読みがありうる * 「面白い読み」とは? * 観客に感情的な反応を促す読み方。単純に情報を提示するのでは駄目。 <hr> <ul> <li> <span style="font-size: 0.6em; color: gray"> *1 え、傑作じゃない? なんで傑作じゃない作品に参加しようとしてるんでしょう……。まああなたの「読み」によって、傑作に化けさせることは可能かもしれません。 </span> </li> </ul> >>> ## 大原則 * 「ん?」と思う部分があるかもしれませんが、戯曲に向き合う上で「ひとまずこういう態度で臨みましょうよ」ということです * このワークの間だけでいいので、この態度を盲目的に貫いてみましょう。一旦ね * 批判的な読み、書いてあることを正確に拾う読みが必要な場面もありますが、この場では忘れましょう --- ## 今日やること * 「図にする」ことを考える * 何が起きているかを整理する * 対立を発見する --- ## 迷ったら: 作業の前に * 「どっちがいいんだろう」と迷う場面は必ずあります。そんな時は、 * 「自分がより魅力的に見えるのは」「他人をより魅力的に見せられるのは」どちらだろう? に立ち返りましょう * たとえ悪役でも魅力的でなければなりません。好かれなくてもいいですが、魅力的ではあるべきです。 --- ## 図にする * 自分の記憶力、認識力を過信しないこと。 * 適切に抽象化して全体を出来る限りひと目で把握できるようにすること。 * 何例か紹介するが、理想はその時々の目的に合わせて適切な図を考案すること(ここは上級者編)。 >>> ### やり方の例 * 人の出入りに注目する * キャラクターの行動と、それが示す性質を拾い上げる * 全体で、その場で、そのシーンで、そのやり取りで何が起きたかを整理する * 戯曲における対立の発見と、それに対する機能を対比する >>> ### やり方の例 * これらの観点は、良い物語を書くための指南書が良い参考になる。自分で書かない人でもいくつか読んでみるといいです。 * まず枠を作り、中身を埋める、という形式が威力を発揮することが多いです。 --- ## 何が起きているかの整理 * 以下の質問に答えてみよう * この戯曲は「何が起こる話?」 * 変化に注目すること。誰が何をすることで、何が変わるのか * 場の単位では? シーン単位では? 会話単位では? * 「誰にとってか」を変えると違う見え方になることに注意 --- ## 対立の発見 * 対立とは * キャラクターの目的とそれに対する障害 * 全体に通底する大きなものから、ちょっとした一言に表れる小さなものまであります * つい大きなものだけ考えがちだけど小さなものも大事 >>> * 以下の質問に答えてみよう * あなたは何をしたい? 何をしようとしている? * それを達成できなかったら何が起こる? * あなたはいま何を必要としている? * 「しようとしていること」と「必要としていること」がズレていることがある * それができない理由は何? 何が邪魔している? * それは明確に意識していること? それとも無意識? --- ## やってみよう >>> ### 戯曲の分割(やること) * 戯曲で「ここは何らかの区切り」と思うところをすべてメモしましょう * なぜそこで分割したのかは出来る限り <span style="color:red;">言語化してメモ</span>っておきましょう * 一貫した基準での分割じゃなくていいです(あとで整理します) * 少ないよりは多いほうが望ましいです(あとで整理します) * 既存の「◯場」とかは、使ってもいいし無視してもいいです >>> ### 戯曲の分割(なぜやるのか) * 全体をまとめて理解するのは難しいので分割して整理するためです(※困難は分割せよ) * 「全体として」みたいなのは一度忘れます。そういうのはパーツの分析の後で大丈夫です >>> ### 目的と対立の発見 * アウトライン * 分割したシーンを縦軸、戯曲に登場するすべての人物を横軸にした表を作ります * シーン数 × キャラクター数の表になります。手書きでもExcelでもOK * すべてのマスについて2つの要素で埋めます * そのキャラクターの「目的」 * その目的の達成を阻む障害 >>> ### 「目的と対立の発見」の注意点1 * 全体に通底する壮大なのじゃなくて良いです。細かく瞬間的なものを選びましょう。全体的なものはあとで考えます * 「目的」にも「障害」にも正解はありません。「面白い読み方の発見」に繋がるなら、深読み・邪推大歓迎。戯曲はあくまでヒントです * <span style="color: red;">迷ったら「失敗したときにより重大な損失に繋がる」ものを選びましょう</span> >>> ### 「目的と対立の発見」の注意点2 * まだ登場してないキャラクターのマス以外は<span style="color: red;">必ず全部</span>埋めましょう。 * 一度登場したなら、その場にいないマスにも書けるはず * 可能なら登場前についても書きたいです * シーンが細かいので「上と全く同じ」みたいなのが出てくるのはOKです * 「キャラクターBさんに関する区切り」とかもあるはずなので、これ自体は普通のことです >>> ### 「目的と対立の発見」の注意点3 * 「マスのサイズが全然足らない!!」と思って、途中でやめて最初からやり直したくなる衝動に駆られるかもしれません * でもそれは<span style="color: red; font-size: 1.2em;">禁止</span>です * やるにしても一度最後までやり通してから、次のシートを別途作ります * 決めた枠内に収めるために「何を書かないか」を考えることも大事です >>> ### シーンの整理 * 埋めたマスを眺めながら、それぞれのシーンにタイトルを付けてみましょう * 似た種類の「理由」をグループ分けしてみましょう * 「正解」のグルーピングがありわけではありません。グループ分けのパターンが複数あるとむしろ発想の種になります * 付箋を使うと便利かもしれません(KJ法などを参考に) * 「グループの仕方」にも名前をつけましょう >>> ### 関連付け(なにを) * ここまでに書いた以下の要素を関連付けしていきます * シーンタイトル * キャラクターの目的 * 目的を阻む障害 >>> ### 関連付け(どの様に) * 例えば以下の観点でリンクを作っていきます * これとこれは同じものだ。あるいは似ている * これが原因でこの様な結果になった * 成功したのでこうなった * 失敗したのでこうなった * ここが繋がると(キャラが)思ってないのに繋がった * これとこれは対立している・両立しない * この事実を知らない * キャラクターが。あるいはキャラクターだけが * 観客が。あるいは観客だけが >>> ### その他 * 作業中の気付きを、前のステップに戻って表に反映させるのはOKです * そこまで作ったものを破棄して1からやり直すのはNGです * 永久に終わらないよ! おとなしくやりきりましょう >>> ### 出来上がり例 * <a href="/img/ws/1/output.png" target="_blank">こんなかんじ(別タブ)</a> * 出来る限り全体を一度に俯瞰できるサイズが望ましいです * 3人芝居30分でこれくらいの分量です * 字が汚いのは許して欲しい。こういうのは自分用なの!! --- ## まとめ >>> * 正解は存在しません。より面白くなる解釈を発見・発明することを意識します * 最初にアウトラインを用意して中身を「すべて」埋めます * 気付いていなかったり、無意識に避けているところにも向き合えます * 「何を書くか」と同じくらい「何を書かないか」も大事です * 全部書くなら戯曲そのものになっちゃいます * 手を動かして、自分の頭の外に情報を追い出すことが重要です >>> * 「センス」みたいなあやふやな要素をできる限り排除して、機械的に作業を進めるだけで一定以上の「読み」に到達できるよう工夫したつもりです * 今回は「キャラクターの目的と障害(対立)」に絞った整理の仕方をしましたが、それが全てではありません。あくまでひとつの観点です >>> * みなさまがつくるお芝居の面白さに少しでも寄与できれば幸いです。お疲れさまでした。