※開場は開演の30分前から ※全席自由席
東京からずっと西に、一つの学生寮があった。 華やかな学生たちが行き交うキャンパスのはずれにある、建っているというよりは地面から生えているといった風情の 木造・2階建ての古い学生寮だ。 100年前から学生たちが暮らし、やがて去っていった場所。
黄ばんだビラや落書きだらけの廊下にこっちからあっちまで並んだ穴蔵のような部屋。 部屋の中の壁もまた、落書きで埋め尽くされている。 かつてここに住んだ若者たちが、ここを去る日に、書き残していった落書きだ。
西棟2階のどんづまり、209号室にたむろしている5人の学生にも、それぞれの旅立ちのときが迫っていた。 そして、寮自体も最期のときをむかえようとしていた。
京都で演劇をしていた大田と東京でうつろな目をしていた出口からなる社会人演劇ユニット。 財形で貯めたお金を元手に、ひっそりと役者や稽古場を探している。 ユニット名は“芝居する熊”の意で、大田と出口が共に熊さんのようなビジュアルなことから名付けられた。 舞台上でくらい牙を剥いて暴れたいと思うものの、生来の気弱さがそれを許さない。